僕はチキンをやめようと思う

このままでは何者にもなれないし何も楽しいことなんて見つからないと気付いた時、チキンをやめることを決意した

最もほしいものってなんやねん

意味のわからない格好をして理解不能なものを持っていて前衛的な服装をした女の子と写真家と名乗るカメラを持った女の子がいた。

 

「それなんですか?」

 

「ちりめんじゃこのベッドです…」

真っ赤な台の上に赤い糸を巻かれた五円玉とちりめんじゃこが一匹はいったベッドが置いてあった…いや意味わかんないだろうけどマジで。

 

どうやら彼女は普通の中の一人、one of themになりたくなくて内側から巻き起こる感情をそのような形で表現せずにはいられなかったらしい。

 

ちょうどコインロッカー・ベイビーズっていう少年たちの強すぎるエネルギーが破壊に向かっていく小説を読んだ直後だったので、興奮して彼女に教えてあげた。

 

いつかそのエネルギーをうまく消化できる何か、生産的な何かにつながってほしいと勝手に思った。 

 

タバコを吸っていたら、カメラの子が

「写真を撮らせてください」なんて言ってきたから承諾した。

 

ふと気になって

「どうして写真を撮ってるんですか?」と聞くと

 

「人間を知りたいからです」と言ったので

 

「じゃあそのカメラを通して俺はどんな人間に見えますか?」と聞いてみた。

 

「まだしっかり話していないからわからないです」という答えが返ってきて、頭の上に?が浮かんだ。

 

直接話しかけたほうがいいのでは?と聞いてみると、カメラというツールを通して初めて話しかけることができるのだと言っていた。

 

だんだんイラついてきていた。自分の目が冷たくなっている気がする。

人を知りたいと言いながら一度も目を合わせない臆病さもカメラをただ人と繋がるための道具にしているところも自分が責められているとわかるとすぐ逃げ出すところも気に食わなかった。

 

写真家と名乗るからには目的はいい写真を撮ることじゃないとダメじゃないの?芸術家感ないなぁ〜

 

「インタビューの機材買ったほうが良かったんじゃないですか?」という皮肉ったさよならをしてきた。

 

自分が最も欲しいものは何かわかっていない奴は、欲しいものを手に入れることが絶対にできない、キクはいつもそう考えている。

 

というよんだばかりの台詞が頭に浮かんだ。

自分のほしいものなんてよくわかっていない。

 

そこで気づいた。

彼女たちも自分が欲しいものが何かわかっておらず、それにもかかわらずとにかく何かをやらずにはいられない。

俺と同じだったんだ…

ごめんよ!