鈍感な彼女、敏感になりたいおれ
目の前に座っていた。足を組み携帯の画面を見つめているせいで黒髪のショートカットが影を作り顔は見えないが、紅く塗られた唇が目を引いた。
地方大学らしく地味で平凡な学生の中で、彼女のショートカットとツルツルとした茶色のロングスカートに惹かれた。
呼吸を整える。今行かなければ一生何もできない。いつもの言葉を何度か唱え
「院生ですか?」
自然に話しかけられた。彼女の雰囲気から院生か留学かをしている、とにかく四年生の大学をそのまま四年で終えるような人には見えなかったが、当たっていた。
しばらく会話を続ける。また今度話してくれませんかということで、連絡先を聞いた。
後日、カフェで話した。
彼女の人に合わせがちな態度や不自然な眉の動かし方、常に机の上のものを触っている姿をなんとなく見ていた。彼女が人と深く付き合うことに魅力を感じてないということに気がつくにつれ、彼女に対して興味がなくなっていくのを感じた。
自分の興味がどこにあるのかわからない。
特定の人に対して興味があるのだろうか。
話したい気持ちはあるのに、どんなことを話したらいいのかわからない。
自分の気持ちに心から共感してもらえる人を探しているのではないか。
心を開き、彼女のような人物の心の隙間に入れる技量のないことに気づき、落胆した。
人との会話に敏感に。