10人声かけられるまで帰れま10 (1)
タイトルの通りだ。午後3時渋谷、おれは10人に声をかけるまで帰れま10というルールを課した。
本当は100人とかイキたかったけどチキった。
最近中学生の頃をよく思い出すけど、チキったら負けみたいなゲームを常にやっていた気がする。おれはそれにどうしても負けたくなかったから、意味もわからず廊下でハンドスプリングとかやってみたりしてたんだろうな…
まあとにかく俺は10人に声をかけるまで帰らない、帰れない。
とりあえずハチ公前。こうしてみると、他人というのはどうしてこうも遠くにいるのだろう。
声をかけようという目線で見る他人はまさに聖域、普通にキツイ。
帰りたい。
「とりあえず今日は秋葉原にでも行って漫画なり本でも読めば、明日はいけるかな」
この脳みそをぶっ叩くために頭を思いっきり殴ったけど、アタマが痛いだけだった。
とりあえず行くか。ここでなにもできなければ一生なにもできねえ普通にチキン。死ねばいいってことになる。
「すいません」
無視された…声も小さかったし相手の目にはただの不審者に映っただろう。
一人目にして心が折れた。早すぎるように感じる?いややればわかる。やってる人もわかるだろう。
歩き回る。センター街、横道、センター街、本屋、4時半までに声かけられなかったら死ぬとか思いつついつのまにか4時40分になってた。(早く死ねチキン)
だめだまじで…こんなカス、死ぬしかない。
(いつも本ばっかり読んでるくせにこういう時は「カス」と「死ね」しか出てこないウケる)
気を取り直した。集中力がたんねぇ。俺は10時間は飲まず食わずで本読める集中力があると自分で思っていたのに。こんなの集中力さえあれば周りも気にしないし、普通に会話もできるやろ。
ろくに声もかけられないクセに楽観的に考える。ほんとのほんとにヤバイ。俺はこのままじゃヤバイ。危機感に追い立てられる。
当然だ。自分ルールを守らなければ死ぬ。
(死んだように生きるという比喩だけど)
よしいくぞ!一応、気を取り直した
ほとんど投げやりに「こんにちは」
何と芸がないのだろうと思っていたら無視された。
ハチ公前に座る。
10分間くらいどうやって自殺しようか考えた。
ふと対面に座る女の人が目に留まった。
髪は長くて黒い。前髪を上げている例のエロい髪型で年上っぽい。
携帯もいじらず、ただぼんやりとしていて待ち合わせ風ではないのだ。
何人の女の人を見てきたと思ってる。今日だけで渋谷を何周してると思っているんだ。そんなのわかる、ここがチャンスなんだ!
ああわかった…神だ。神がここで声をかけろと言っている。ピンときた俺はすでに歩き出していた。
隣りに座る。
「俺の話を聞いてください」
神に懺悔する気分で言った。
そしてどうも耳を傾けてくれている感じがする。
「俺にはやりたいことがあるんです。でもチキってしまって全然できません…死んだほうがいいですか?」
「やりたいことってどんなことですか」
今日、自分に課した意味のわからないルールを説明して、そのルールを定めるに至った過程を説明した。相手は神なのだ。隠し事はできない。一通り聴き終えたあと彼女はこう言った。
「やればいいじゃないですか」
一言。そのあと30ぷんくらい話していたが、どうやら彼女は27歳で広島から仕事で東京に来たらしい。
それにしてもあのひとこと。何と痺れる。
ああそうだよね難しいよね。なんていう同調を求めていないのは神にもご理解いただけていたのだ!
ヒッチハイクで広島に行ったらご飯を食べてくれる。という約束をしてラインを交換してさよならした。
以降 パート2に続く
うまく話せた俺は自信を持てたが、それがいつまで続いたのか。
ぜひ次も読んで!